私だけが幸せになぁれ
訓練校開始時からずっと最前列に座っている人達が席替えを希望していると知り、そりゃそうだ良い場所も悪い場所もシェアしないと平等な教室とはいえないし、訓練生という対等な関係にある我々なら尚更、一部の人だけが不利益を被っている現状を変えねばならないだろう。私はクラスメイトに最前列者たちの苦悩を共有し、先生に席替えを提案する旨の了承を取ってまわった。さすが皆大人だけあって話が早い。思うことも同じだったのであろう。返事は一様に、
「自分はもう今の席で慣れているから席替えしたくない。ずっと一番前の席にいる人達が辛かろうが知ったこっちゃない。」
コタツでみかん食べてるばあちゃんが思わずガクンとずっこけたヒジがブラジルまで突き抜ける衝撃。大人として、いや人としてどうなんレベルの発言を受け私は「てめえらの血はなに色だぁーーーーっ!!」と叫びたくなったが必死にブレーキをかけた。どうやら本当に誰も席替えを望んでおらず、望んでいるのは一番前の席の人達だけということが判明した。じゃあ余計にその人達のストレスが知れるというもので、むしろ席替えに賛成するとか、「大変だったね。席を替わってあげようか?」と声をかけてあげるとかもっとなんかこうあたたかいヒューマンなアレがあるのではないか。それが大人であり、仲間なのではないのだろうか。最初からずっと思っていたことをもう一度言うが、お前ら今までどんな会社で何気分で働いてきたんや。他人の痛みを知ったり手を差し伸べたりとかそういう機能付いてないんかその体に。飲み会の時の交流の場面を見て彼らを見直した矢先、それを惑星衝突くらいの勢いで押し潰した今回の案件だったので私はもう今度こそ彼らと関わるのをやめた。ダメだこの人たちは。そしてこんなんがこれから入社してくる会社は心から不憫だ。
「コイツ採って失敗したーーーー!!!」
社長の叫びが今から聞こえる。
キミの行いがいけないのだよ
このまま無理に席替えを強行しても暴動が起きるだろう。ダメな人達ほど自分に都合の良い権利は死守するものだ。でも先生への席替申請を約束した最前列のあの子…笑顔が素敵なので仮に「ハグキちゃん」としよう、彼女との約束は守りたい。そこで考えに考え抜いて閃いた。俺が個人的にハグキちゃんと席を替わってあげれば良いのだ。俺はどの席でもかまわないし、彼女も後ろの席に行ってみたいと言っている。需要と供給の完全なる一致。他にも後ろに行きたいと言っていた最前列組がいたがその人達のことまで面倒見切れない。俺は最初にそれを相談してきたハグキちゃんとの約束は果たすが俺ができるのはそこまで。後は(お前なんかに席は渡さんぞぉぉ~~!!お前だけが不幸になれ~私だけが幸せになれ~~!!!)と心から思っている後ろの有象無象たちと話をつけてほしい。大人でしょ?自分が求める環境を実現したいなら自分で努力しないと。冷たい言い方かもしれないがチャンスは自らの手で掴むもの。社会人たるもの他力本願では生き残れない。
ちなみに最前列メンバーにはオカッパちゃんとこの時はまだ在籍していたッタァーンカーメンがいた。
意図的に見捨てたわけではない。たぶん。
人格を3段階落とす魔法の言葉
「ズルい!」
先生に確認したところ当人同士の了承が得られているなら席替えは自由とのこと。その旨ハグキちゃんに伝え準備でき次第席を交代することにした。「でも私だけ席替わって何か文句言われないかしら?」と心配してたので「そもそもみんな飲み会の時にキミの気持ちも聞いてるし、それに俺が個人的に応えるだけだから誰に文句を言われる筋合いもない。堂々と「後ろで勉強してみたかったので来ました。よろしくお願いします。」とご近所挨拶すれば大丈夫だよ。」と伝えた。はぁ、めんどくさいなこういう陰気な人達への根回し&気遣い。あんただけズルい!て言う人ほんとにいるもんね。それまで積み上げてきた徳を一瞬で蒸発させるパワーワード。まぁその言葉を使う人はそもそも人間性がアレなんで徳なんて無いのだけども許されるならそんな奴はロープに振って返ってきたところを遠心力をフルに使ったノーザンライトスープレックスでマットに沈め最後の力を振り絞って立ち上がろうとしているところに「くらえ!シャイニングウィザード!!」と美しく弧を描いた踵がブスの意識を遥か上空へ弾き飛ばし「イィヤアアァァ~~ッッ!!!」と勝ち名乗りを上げたい。
というわけでハグキちゃんと席を替わりました。いつもサポートしていたお姉さまが別れを惜しんでくれたので2~3m移動するだけだからあんま変わんないですよ、ひとまずお隣としてお世話になりましたとお礼を言った。まぁ、これから彼女の疑問の10割を負担することになる先生が大変なのだが。
あっ!という間の
席替えをしてご近所挨拶をし、新たな気持ちで学習を開始した。最前列で特にストレスは感じなかったが、やはりみんなから見られてる気がするし最初からずっとこの席だとストレスはあったろう。後ろの席ののんびり度に比べればここを嫌がる人がいるのも頷ける。ただ、席を離れたことにより毎休み時間ごとに質問してきてたお姉さまのサポートが終わったので誰にも邪魔されることなくのびのびと作業できるようになった。周りも無害な人達だし俺にとってここは制作に集中できる理想的な環境。結果オーライ情けは人のためならず。さぁてバリバリ作業に励むとしよう。
訓練校も折り返しを過ぎ残り僅か。これからはそれぞれの卒業作品を制作していく。ついこないだ訓練校にやってきたのに、もう6ヶ月が経とうとしていた。