それでも生きるあなたへ

腕が光り輝くみそ五郎どん

それガチャガチャの腕時計?

おなかがすいたのでごはんに行きたいと投稿していた女性にメールを送ったところすぐに話がついて焼肉ディナーに行くことに。年齢はいくつか上だが先日の戦後生まれよりは全然若い。見た目も普通で特に問題は無い。これは勝利なのでは?あとは人間性さえ問題なければ念願の飲み友達ゲットということになる。車内でお互いの自己紹介をしてお店に到着。少し声が震え気味だが人見知りなのかな?まぁそれはさて置きおなかすいたよね~とか言いながら入店。

肉は飲み物です

行きつけの焼肉屋さん。お高いが凄く美味い。せっかく会ってくれたのでなんでも好きなもの食べていいよと言ったが一番安いカルビとかロースとかその辺しか頼まない。控えめな良い子だ。これは人間性も問題ないと判断して良いだろう。注文したお肉が到着し炭火でジュージュー焼く。さぁどうぞと取ってあげる。お口に合うと良いが。

「ガツガツガツガツ!ジュルッ!ジュルルルルゾバババババッッ!!」

ん?えらい食いっぷりがいいな。というかガッツき過ぎというか、なんか後半蕎麦の音してなかった?凄まじい勢いで肉をかき込む腕に光るライムグリーンの四角いプラスチックのデジタル時計。それガチャガチャのやつじゃない?ガチャガチャで小学生が獲るやつじゃない?そういえば明るい店内で見ると服装もなんか幼いというか、若い頃買ったジャージみたいなやつを着ている。「おなかすいてるって言ってたもんね。美味しい?」と聞くと「うん!ごはん食べるの三日ぶり!」

…そういう意味の「ごはん食べたい」だったの?生き物としてというか、生存のためにというか。なるほどこれはまたおばあちゃんとは違うタイプの物の怪が現れたぞ。いやしかし何か事情があって一時的な飢餓状態なのかもしれない。前田慶次に相対した時の秀吉のようにいつでも跳べるよう重心を後方へ移しお話を伺った。

「生活保護受けててぇ~!彼氏がカップ麺とかくれてたけどケンカしたらくれなくなってぇ~!あと近所の人が彼氏いること役場にチクって生活保護も打ち切られてぇ~!ごはんも無いし彼氏も来ないし意味がわかんない!」

ユニコーンの『おかしな二人』みたいに言うな。名曲を汚すんじゃないよ。意味がわからないというか、それ全て順当な話だろうが。

「だから良いお肉食べると胃がビックリして吐いたらもったいないから一番安い肉にした!ニシシシシ!」

そうですか。声が震えてたのも久しぶりに食事できる興奮で武者震いしていたらしい。あと漫画以外でニシシシシて笑う人を初めて見ました。ありがとうございました。解散!

靴下のゴム切れてヨレヨレなるわ

行きつけのお店だったのでマスターが俺のことをとてもかわいそうな目で見ていたのが印象的だった。うわぁこいつ女の趣味悪いなぁという、不憫な生き物に対する憐みの目で「ありがとうございました…」と言っていた。マスターごめんよ、暗いとこだと普通の人だと思ったのよ。良かれと思ってマスターのお店を使おうと思ったの。でもまさかガチャガチャの腕時計して蕎麦をすするように肉を吸う吸引力の変わらないダイソン物の怪だとは思わなかったし、予約入れて店に来て「女の様子がおかしいのでやっぱ帰ります」とは言えないでしょ?大目に見てほしい。

心の中でマスターに何度も謝りながらダイソンを送っていくと「次はいつごはん食べさせてくれるの?明日は?明日もお肉食べさせてくれるの?」と言うのでそういうのは行政の然るべき担当職員に言ってくださいと喉まで出かかったがまた今度ね、と言って別れた。翌日からもおなかすいたおなかすいたと何度も連絡が来るのでカップ麺とかを差し入れてあげたがさすがに俺は365連勤のサンタクロースではないのでそっとブロックした。その後も出会い系サイトに「おなかすいたー!誰かごはん行こー!」「おなかすいたよ~」「まじでおなかすいた。誰か~」「おなか…すいた」などと投稿を続けておられたようだが怖くなって途中から見ないようにした。今年のクリスマスは彼女のもとにサンタさんは来たのだろうか。メリークリスマス!

こんな人たちばっかなん?

やはり出会い系サイトで人生を向上させるのは無理なのではないだろうか。だっていきなり現役キャバ嬢のおばあちゃんと生活保護のダイソンに出会うか?今まで生きてきてこんな短期間にこんなビックリ人間に出会ったことないぞ。そういうのは普通何年かに一人出会っておもしろ話として友達と飲みながら笑い合うもんじゃないの?そう考えるとある意味出会い系サイトは個性ある人々に出会える恰好のツールなのかもしれないが今の俺は普通の人との出会いを求めているのだ。YouTuberがネタを探しに来てるんじゃないんだよ。課金して二人遭って…もとい会ってこれじゃ心が折れそうになったがまだポイントは残っている。たかが二人で挫けるな!そう自分に喝を入れまた出会い系サイトを再開した。昔の人は偉いもんで三度目の正直という言葉があるし、Hip HopにもKeep on moving!という言葉がある。負けるな!続けろ。この日記だってそんな気持ちで書いている。誰かがこれを見て生きる勇気や光を感じてくれたらと願っている。諦めるな!きっと人生は救われる。

数日後、私は100kgオーバーの50代女性とタクシーで見知らぬ街に向かっていた。